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寝台特急"サンライズエクスプレス"乗車行 Part5 [鉄道(路線)]

 さて、哀愁の大社駅を後にしていよいよ出雲大社である。先ほど
下車した一畑の出雲大社前駅を通り過ぎ、そこから5分も歩くとコン
クリート造りの大鳥居があり、そこから少し行くと出雲大社の参道
入り口である。

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出雲大社参道入り口

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参道の入り口から大鳥居を眺める
撮影:CanonPowerShotS90
シーズンOFFの平日であるためか、人は少ない。

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参道
なにやら補修工事中であった。


 今更説明するまでも無いが、この出雲大社は大国主神を祭神とする
神社である。正式名称は"いずもおおやしろ"であるが、一般的には
"いずもたいしゃ"と呼ばれ、その他の神社とは違い二拝四拍手一拝の
作法で拝礼する。
 私が訪れた10月は一般に"神無月"とよばれ、日本全国の神様がここ
出雲大社に集まると言われているが、これは旧暦の10月であるため、
新暦である現在の神無月は11月である。また現在の出雲大社はちょうど
"平成の大遷宮"であるため、御神体は平成25年まで御仮殿に遷されて
おり、御本殿は修造中である。

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御仮殿
仮とは言え、なんともスピリチュアルな雰囲気が漂う。

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西十九社
全国の神様が神無月に出雲大社へ来た際の社である。東にも
同じ社がある。

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釜社
東十九社の並びにある。御祭神は宇迦之魂神(うかのみたまのかみ)
で食べ物の神様である。

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修造中の御本殿
近代的な囲いに覆われているのは少し興醒めかもしれないが、
この様な出雲大社を見られるのも60年に1度だけだ。

 先述のように、ここ出雲大社では二拝四拍手一拝の作法で拝礼する
のだが、コレを知らずに参拝する人が多いのは驚きで、かなりの人が
お寺でやるよう静かに手を合わせて拝んでいた。最近は若い女性の間
で"パワースポット"が流行っているらしく、ここ縁結びの神様である出雲
大社も、気のせいか若い女性が多かったのだが、その殆どは正式な
作法で参拝していなかった。折角の縁結び、出雲大社であるので、
思わず"そうじゃありませんよ、お嬢さん(微笑)"と声の1つもかけて
みようかと思ったのだが、まぁ止めておいて正解だったろうな(笑)。
 
 折角なので、縁結びのお守りを購入した。縁結びは何も異性に限った
事ではなく、友人知人、親子までをも含んだ縁結びが出雲大社の御利益
である。他に家内安全の木札と壮健のお守りも購入した(先日の健康
診断で不穏な結果が出ていたので精密検査受診を前に(笑)。


 移動中の列車内以外、重いカメラバッグを持って歩きっぱなしで
あったせいか、このあたりからかなり肉体的に疲労してしまい、撮影
数が少なくなっている。一畑電鉄で出雲市駅まで戻るつもりでいた
のだが、参道を出たところに一畑バスの停留場があり、あと10分で
次の出雲市駅行きが来るので、少し早いがこのバスで出雲市駅まで
戻る事にした。
 バスは30分弱でJR出雲市駅に到着し、早速夕食の手配である。
前もって調べてはいたのだが、出雲市駅は駅弁の種類がそれほど
多くなく、しかもこの時間は売り切れているものもあり、品物によって
は前もって取り置きか予約をしておく必要がありそうだ。
 私は特にそのような手配はしていなかったが、駅前に2軒コンビニ
があったので、そこで弁当を買うつもりでいた。朝からうどんと蕎麦
だけだったので、体がもっと食べ応えのあるガッツリした物を要求
していたのだろう。結局コンビニで"ボリュームから揚げ弁当"という
何とも旅情の無い弁当を購入した(笑)。
 その後出雲市駅の土産物店で日本酒、ついでに駅の売店でペット
ボトルを一本とチョコレートを購入、復路サンライズの出発を駅の
コンコースで待つ事にした(この時点でかなり疲れてしまっていた)。

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旭日ひやおろし出雲産五百万石純米酒
撮影:CanonPowerShotS90(自宅にて)
辛口でかなりシャープな飲み口。悪くはないが、個人的にあまり
好みの味ではなかった。出雲市佐田町産で今年の新商品である。


 サンライズ入線の20分前にホームへと上がり、その入線を待った。
発車は2番線であるが、その前に先発の岡山行きやくも30号が2番線
に止まっていたので、これを撮影。発車の模様もビデオで撮影したの
だが、隣の1番線に入ってきた普通列車からの乗客が大勢写ってし
まったので、これは公開せずプライベートアーカイブとした。
 そして18:42分、私を乗せる"サンライズ出雲 東京行き"が西出雲
方から2番線へと入線してきた(YouTube)。

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出雲市駅2番線発車案内

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2番線先の発車は"やくも30号"

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2番線乗車案内

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2番線で出発を待つ"サンライズ出雲"東京行き
復路も4号車に乗車。贅沢ではあるがこの285系シングルDX
への乗車が今回の最大の目的である。

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転落防止ホロ
新造時には無かったが、去年の夏ごろには全編成に取り付け
られたようだ。

 出雲市駅からの乗客は私を含め5~6人である。入線をビデオ
で撮影(上記YouTube)し、早速乗り込み自分の部屋に荷物を置き、
帰り分の乗車券を確認してから部屋を出ると、隣の部屋の検札を
終えたカレチ氏がちょうど階段の下にいたので検札を済ました。
 このサンライズ出雲に乗務するのは米子車掌区の人で、検札時
にシャワーの使い方等を詳しく説明してくれた。分かっている事
だが(カードは一度しか使えない等々)、懇切丁寧に説明してくれ
るので最後まで耳を傾けた。一通りの説明を聞き終えたところで、
早速タオルセットを購入したい旨を告げると、直ぐにとってきますと
言い、カレチ氏は小走りに乗務員室へと引き返して行った。
 行きにもサンライズ瀬戸でタオルセットを購入したが、こちらは
今回の旅で使うためで、実際にタオルも歯ブラシも使用した。いま
米子車掌区から購入するのは今回のサンライズ乗車記念である。
カレチ氏はものの1~2分すると、タオルセットを携えてやはり小走り
に戻ってきた。検札の時もそうだったが、カレチ氏は階段部分に
膝をついて応対するので、こちらが立ったままだと物凄い"上から
目線"になってしまう。そのせいか、私も何となく自然と床に正座(笑)
して応対してしまった。

 列車は出雲市駅を定刻に発車。発車時の車内放送を含めた
ビデオを撮影後、行きの瀬戸で購入したタオルを持って早速
シャワールームに向かう。往路の瀬戸では、家で入浴してきた
のでシャワーカードを使わなかった。1枚は未使用で記念にした
かったのである。
 出雲市からの乗客も少なかったせいか、シャワールームは
まだ利用された形跡もなく、思った通り私が最初の客であった。
 このサンライズのシャワー、以前の"北陸"と同じくお湯が出る
時間はトータル6分である。利用した事が無い人は短いように
感じるだろうが、実際は十分だ。まずは1分30秒程お湯を浴び
つつタオルにお湯を含ませておき、一旦STOPボタンを押す。
シャンプーで髪を泡立て、次にタオルでボディソープを泡立て
体をゴシゴシと洗う。ここでシャワーのSTARTボタンを押して
残りの4分30秒で体を洗い流しつつ温まるという流れが良い。
知らなかったがこのシャワー、残り1分を切ると警告音が鳴る。
ちなみにボディソープとリンスinシャンプーはシャワールーム
に備え付けられている。この"乗車行Part1"でも記した事だが、
シャワーカードを6分使い切らず数分残し、翌朝残り時間分の
シャワーを利用する事は不可能だ。一度利用したカードで
脱衣所の鍵を開けると、その時点でカードは無効になってし
まうので、どうしても翌朝にシャワーを利用したいのならば、
改めてシャワーカードを購入する必要がある。販売分のカード
に余裕があれば購入可能である(夏場の利用客が多いシーズン
はまず無理かと思われる)。

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撮影:Sony HDR-XR520V(動画より切り出し)
シャワールームにはボディソープとリンスinシャンプーが常備
されているのが嬉しい。SHISEIDOとロゴが書いてある。

 利用後は"洗浄"ボタンを押すのがマナー。このボタンを押すと
シャワールーム天井から冷水が噴出し、それが終わると強烈な
冷風が噴出す仕組みとなっている。前もってこの冷風が吹き
すさぶ音が凄いと知ってはいたのだが、それでも驚いてしまった程、
その音と風勢は強烈だった(笑)。
 これも"北陸"で経験済みだが、ドライヤーは風量が弱くて当てに
ならない。ちなみにこの時、JR西日本車とJR東海車でドライヤーの
形が違う事に気がついた。

285carNo.JPG
サロハネ285-1の車番プレート
復路の車輌はJR西日本車(0番台)のトップナンバーであった。

 肉体的にすっかりとリラックスしたところで、自分の部屋へと戻り、
コンビニの"から揚げ弁当"をノンビリと食べる。
 列車は既に伯備線に入り、人家の明かりもまばらとなった夜の
中国山地を山陽方面へとひた走る。トンネルで両隣と下の窓明か
りが内壁に照らし出されているのが見えた。松江と米子で乗って
きたのだろう、4号車の乗車率は8~9割といった感じである。新見
で窓の下を年配の3人組が小走りに走っていくの見えたので、ここ
でも乗客があったようだ。伯備線では時々下りのやくもと列車交換
をしながら、サンライズは順調に中国山地を走り抜けて行く。この時、
今回の旅程で初めて"パノラマやくも"を見た。
 私は室内の照明を落とし、1人のんびりと呑みながら、夜の伯備線
を走るサンライズの巨躯は、一体どれほどの存在感を見る者に与え
るだろうと思いを巡らせていた。

deskswitch.JPG
このデスクライト、"消灯できないorやり方が分からなかった"
といった記述をサンライズエクスプレスに関するblogで偶に
見かけたが、赤丸のところにスイッチがあり、光量を調整
できないタイプである。ベッド頭脇にあるパネルでのコント
ロールは出来ないので、それがせいで少し分かりにくいの
かもしれない。

 暗い室内から、夜の車窓を楽しむ。昼間にやくもの車内から
見て分かっていたが、この辺りは道路にもあまり街灯が無く、
雲がかかった月の薄明かりに山がぼんやりと浮かび上がり、
すぐ下を流れる黒々とした高梁川の川面にその稜線を浮かび
上がらせている。そんな中、ぽつりぽつりと人家の明かりが
人の生活を感じさせ、時々思い出したように車のヘッドライト
が窓の外をスッと流れる。こうして我々乗客がくつろいでいる
時も、先頭車では運転士が闇に浮かぶ信号機を指差し喚呼し、
安全な運行に心を砕いているのだろう・・・。

・・・突然コンビニの強烈に明るい看板が通り過ぎた(笑)。

 中国山地を往来するトラックの利用が多いのだろう、伯備線
沿線のコンビニは駐車場が都市部より広く(大きく)とってある
ようで、それはガソリンスタンドにも当てはまるように見受けら
れた。


 伯備線から山陽本線に入り、サンライズは倉敷へと到着した。
伯備線沿線からだと、都会の街明かりが眩しい程だ。列車は
そのまま岡山へと滑り込むが、前に併結する"サンライズ瀬戸"が
3分ほど遅れているとのアナウンスがあり、我が"出雲"は岡山駅
構内の待避線横で少しの間停車した。その後何度か小刻みに動き、
どうやら前になる"瀬戸"との連結を完了したようだが、実はこの
あたりから記憶が曖昧である。どうやら岡山から眠ってしまった
ようである・・・。




 列車が発車する気配で目が覚めた。時間的に沼津であろう。
まだ外は闇夜であるが、顔を洗って歯を磨き、着替えずにベッド
の上で少しボンヤリとした後、自販機まで寝巻きのまま行き、
部屋に戻ってからタバコに火をつけた。

285haizara.JPG
今回は往復喫煙OK部屋であったが、灰皿はこの位置、洗面台
側にあり、机下から引き出すタイプである。このコーラは車内の
自販機で買った。折角なので列車内の自販機を使ってみたかった
だけなのだが、考えてみれば250ml缶というのも今時ちょっと珍しい
かもしれない。120円。

 熱海を過ぎるとじき小田原である。少々天気は悪いが、朝日
に染まる雲の切れ目が夜明けを告げてくれる(YouTube)。夜を
徹して山陽道、東海道を走り続けたサンライズも、既に関東圏
に入った。岡山で3分ほど遅れが発生していたが、どうやら今は
定時で運行されているようだ。このままなら定刻の7:08には終着
の東京に到着である。
 サンライズは茅ヶ崎駅を過ぎると、不意に減速した。何だろう
と思っていると、ガタガタとポイントを通過し、線路脇の建物が
迫ってきた。どうやら貨物線を走行していたらしく、この茅ヶ崎
で東海道の旅客線へと転線したらしい。早川あたりではホームを
通過していたので、小田原あたりから貨物線を走っていたようだ。
そういえば次々と東海道線のE231を追い越していた様な気がする。
サンライズは遅れが発生すると、貨物線を経由し横浜を迂回して
そのまま品川着で運転打ち切りとなる事が稀にある。そのような
時はそのまま貨物線を走り続け横浜羽沢(新横浜に近い貨物駅)を
経由するので横浜には停車しない。定時運行でも小田原~茅ヶ崎
辺りでJR貨物の線路を走っているとは知らなかった。やがて大船
を通過すると、車窓から横須賀線のE217が見えた(YouTube)。
今回の車中2泊サンライズエクスプレスの1人旅もじき終着である
事を実感する。通過するホームも、まだラッシュには少し時間が
あるが、スーツ姿で首都圏へと出勤する人たちが次の電車を
待っている。



 基本的に模型派である私も、品川駅から見える車輌区で異彩
を放つこの285系は登場時から惹かれていた。その内装もさる事
ながら、見た目の存在感と今までに無いカラーリングがとても
魅力的で、そのうち乗りたいと思いつつ、結局この285系に乗車
したのはサンライズエクスプレス登場から10年以上も経ってから
となってしまった。
 285系登場時、この車輌区にはまだ青い14系や24系客車も停泊
していたが今はそれも無く、唯一の東京発寝台特急となってしまった
285系のみがその巨躯を休めているに過ぎない事に、寂しさを感じず
にはいられない。幼い頃に憧れたあのブルーの客車郡は、もはや
過ぎ去りし日々の思い出と憧れの中にしか存在しないのだから。



 そして私を乗せた285系寝台特急"サンライズエクスプレス"は
首都圏へと入った。私にとっての非日常である今回の乗車行も、
この285系車輌にとってはいつもの仕業、日常に過ぎない。この後
も東京で全ての乗客が降りれば車輌区に戻り、整備点検の後、
今夜もまた高松と出雲市に向けて、乗客を乗せいつも通りに深夜
の東京を発つ。その頃は私も、またいつもの日常に戻っているだろう。


 そして今日も、285系はサンライズエクスプレスとしての使命を
果たし、寝台特急としての日常を繰り返す。私はこの寝台特急車輌
にとっての日常が、これからも長く、平穏に続く事を願って止まない。


285takamatsu.JPG
285系サンライズエクスプレス(高松駅にて)




■寝台特急"サンライズエクスプレス"乗車行 Part1
■寝台特急"サンライズエクスプレス"乗車行 Part2
■寝台特急"サンライズエクスプレス"乗車行 Part3
■寝台特急"サンライズエクスプレス"乗車行 Part4

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ワイドビュー

いやー何回見てもサンライズ・・・いいですねー。
いっつも自分言うんですけど、なんで東海の車両なのに名古屋人に何の恩恵もないのーってねー。まず、到着時間が午前様で名古屋で客扱いが無い、もう一つは深夜通過なんで撮り鉄さえも許されない・・・・これは苛めです(笑 浜松まで戻ればぎりぎり乗れるんですけどねー。それもちょっとねー。
by ワイドビュー (2010-11-12 08:24) 

raist

 確かに東海の車輌の中では、虎の子でありながら自エリアでは
存在感を示せない車輌ですね。
 どうせなら、浜松ではなく高松か東京から完乗&新幹線利用
が良いのでは?<これも東海地区の方々には半端ですかねぇ。
by raist (2010-11-12 23:17) 

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