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スケールとゲージの誤解 [鉄道(模型)]

 今回は鉄道模型に関するちょっとマニアックな話しである。この
トピックは日本市場における鉄道模型の楽しみ方に関する誤解と、
それがもたらす製品の特殊性について述べてみたい。



 日本市場における鉄道模型で、一番普及しているのは縮尺1/150の
Nゲージである。その次に普及しているのが1/80、俗に"HOゲージ"と
呼ばれている模型なのだが、実はこの"HOゲージ"という呼称は本来
ありえない名称である事は意外と知られていない。この1/80サイズの
鉄道模型、正しくは日本において"16番ゲージ"と呼ばれるべき規格
であり、これは決して"HOゲージ"ではなく、またそう呼んで良い規格
の模型でもないのだ。

 ゲージとは軌間、つまり線路幅である。スケールは縮尺で、これは
実物の"何分の一"であるかを表す。すなわち"ゲージ"と"スケール"は
その意味するものが全く違う言葉である事に注意しなければならない。
 Nゲージは上記説明したように軌間であり、Nineゲージ、つまりは
線路幅が9mmである事が前提で、この"9mm幅の線路上で鉄道
模型を走らせる"楽しみ方がNゲージである。つまりこの9mm幅の
上で走らせる車輌の縮尺は、それほど厳密に決定されていない
のだ。
 

 新幹線を利用する多くの人は気づいているかもしれないが、新幹線
とJR(国鉄)在来線の線路幅は違っており、新幹線の方が広くなって
いる。南関東在住者なら、私鉄の京浜急行や箱根登山鉄道もJRより
線路幅が広い事に気づいているだろう。実はこの幅の広い軌道こそ、
国際的に"標準軌"と呼ばれている1435mmの軌間で、日本のJR等、
多くの鉄道で採用されている線路幅1067mmは、国際的に"狭軌"と
呼ばれる軌間なのである。

 Nゲージは1/150であると述べたが、これは在来線模型のみであり、
新幹線車輌のNゲージは1/160の縮尺になっている。新幹線が採用
している国際標準軌をNゲージ新幹線の縮尺である1/160で割ってみ
ると1435mm/160で1440mmとなり、ほぼ実物通りとなる。つまり日本
のNゲージ鉄道模型に関して言えば、新幹線車輌のみ正しい縮尺と
なっているのだが、在来線の多くはは9mmの線路幅だと実物より幅
が広くなってしまうのだ。結果的にこの実物よりも幅が広い軌間の上
で可能な限り違和感なく車輌を走らせ、欧米の車輌とも連結可能で
車輌限界を揃え、それ程違和感無く共存させるために、日本型車輌
の在来線に関しては1/150と言う若干大きめの規格で車輌を縮尺して
いるである。


 HOとはスケールであり、純粋に縮尺の規格である。このHO規格は
縮尺1/87と厳密に規定されており、プラットホームや建物等、HOで利用
されるストラクチャーは全てこの1/87でなければならない。つまり日本
でHOゲージとありえない呼ばれ方をしている1/80の鉄道模型はHOで
はなく、ましてやHOゲージなどと呼べるものでは無いのだ。縮尺の規格
であるHOに軌間の意味であるゲージを付けて"HOゲージ"と呼称するなど、
まったく見当違いで頓珍漢なのである。

 日本で"HOゲージ"と呼ばれてしまっているこの1/80規格は、日本の
鉄道模型界に大きな足跡を残した山崎喜陽氏が、本来のHO規格で
ある1/87と、イギリスでもっとも普及していた16.5mmの軌間を使う1/76
スケールのOO(ダブルオー)ゲージと車輌限界を合わせ、日本型車輌
を1/80スケールとし、同じ16.5mmゲージのレール上で一緒に楽しもうと
提唱したのがそもそもの始まりなので、これは"16番"もしくは"16番ゲージ"
と呼称する鉄道模型の楽しみ方なのである。

 最近の鉄道模型市場では、世界的にこの16.5mm軌間1/80のモデル
がジャパニーズHOと呼ばれる事もあるらしいが、この呼び方もHO本来
の意味する方向からすると、やはり的外れと言える。
 実は日本の1067mm軌間をHO本来のスケールである1/87に縮尺
すると、その軌間は12mmとなる。この規格はHOj、HO1067、または
HOn3と呼ばれ、現在は首都圏に展開している鉄道模型専門店である
"IMON"が積極的に展開しているに過ぎない。IMONは自社ブランドで
12mmレールまでをもオリジナルで発売しているのは賞賛に値するが、
それでもまだまだ本来の日本型HOスケール(12mmゲージ)が定着する
には厳しい状況であるかもしれない(車輌単価が高価である事も理由と
して大きいだろう)。



 改めて言うが、HOはゲージではない。HOはスケールであり、日本の
市場で"HOゲージ"と呼ばれてしまっている規格は"16番"もしくは"16番
ゲージ"と呼称すべきなのである。

■ゲージ(線路幅-軌間)ありきの縮尺(スケール)は自由
 ・ユニゲージマルチスケールの遊び方
 ・Nゲージ
 ・日本における16番ゲージ

■スケール(縮尺)ありきのゲージ(線路幅-軌間)は自由
 ・ユニスケールでマルチゲージの鉄道模型
 ・HOスケール(HO"ゲージ"ではなく"スケール"である)
 ・HO1067やHOj、IMONの展開する12mmゲージの鉄道模型


 
 今回のトピックに関しては、一部説明をはしょった部分もあるのだが、
これを細かく厳密に説明するとなると、鉄道模型発祥の地であるとされ
ているイギリスの規格や、鉄道模型を確立したドイツ、さらにこれを商業
として発展させたアメリカ。それにインチとミリ、メートルやフィートの規格差
に関しても厳密に比較検証し、それらの歴史も追わなければならなくなり、
1冊の本が書ける程の情報量になってしまう。

 少々マニアックで細かい内容となってしまったが、少なくとも鉄道模型の
愛好者を自認するなら、くれぐれも"HOゲージ"等と口にしてはいけないの
である。


タグ:鉄道
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コメント 1

ひょうたん2号

 Raistさま、こんばんは、はじめまして。再確認できてありがとうございます。
 スケールとゲージの誤解の件、ご指摘の通りですね。私は通常「16番」と呼んでいます。一部に外国製車両があるので、そのときだけ「HO」と呼ぶようにしています。(1435÷87=16.494 となるため。)
by ひょうたん2号 (2019-05-30 19:59) 

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